Anthropicは2026年10月8日に利用ポリシー(Usage Policy)の改定を発表し、新版は2026年11月12日に施行されます。それまでは2025年9月15日施行の現行版が有効です。この記事では、この2つの版を比べ、ブログ・動画・SNSで商品紹介をしている個人事業主や、Claude Proを執筆・調査に使う一般ユーザーに関係しそうな変更をまとめます。

Anthropic自身は「今回の更新の大半は既存ルールの明確化」と説明しています。ただ、ステマや口コミ、AI検索向けの情報操作など、発信者に直結する文言は新しく明記されました。

なお、利用規約は利用ポリシーを規約の一部としていますが、変更をメールとアプリのどちらで知らせるかは定めていません。Webサイトに掲載された後も使い続けると、変更に同意したものと扱われます(利用規約)。案内が届いていなくても、新版は11月12日から適用されると考えておきましょう。

版施行日出典
新版2026年11月12日Usage Policy(現在の掲載版)
旧版(現行)2025年9月15日アーカイブ版
改定告知2026年10月8日公開2026 Usage Policy update

※この記事は筆者が公式文書を読んで整理したもので、法的助言ではありません。判断に迷う場合は原文を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。

新しく加わった禁止・義務

旧版に対応する文言がなく、新版で初めて書かれた項目です。個人の発信者に関わりそうなものを上に並べました。

項目新版の文言(要約)個人事業主への関係
スポンサーの隠蔽世論や意思決定者に影響を与える目的で、コンテンツのスポンサーを偽る・意図的に隠すことを禁止高い。案件や提供品を隠した商品紹介をClaudeで作ると該当し得る
AI・検索の情報源の操作出所・著者・独立性を偽ったコンテンツをバラまいて、検索エンジンやAIが参照する情報源を操作することを禁止中。通常のSEOは対象外だが、第三者を装った大量記事で評価を作る手法は危険
形だけ独立したメディア網発信元が同じことを隠して、独立しているように見えるサイトやアカウント網で配信することを禁止中。複数ブログやサブアカウントで同じ商品を「別人の声」として推すのはNG
欺瞞キャンペーン用ツールの開発サクラ、ステルスマーケティング、大量なりすましなどを可能にするツールの構築や、その販売・資金募集を禁止低い。自動投稿ツールを自作する場合は用途に注意
モデルへの虐待的な振る舞い「モデルに対する継続的で不必要な虐待的・残酷な行為」を禁止低い。通常の苛立ちや反論、暗い創作テーマは対象外と告知で明言
不正な支払い・支払い回避盗難・不正な支払い手段の利用や、支払いの回避を禁止低い(当然の内容の明文化)
無許可の転売・代理アクセス無許可でClaudeを転売・中継すること、個人向けサブスク経由でリクエストを流すことを禁止中。Pro契約を他人や自作サービスの裏側として使わせるのはNG
物理的な動作を伴う高リスク用途ロボット等をClaudeが動かす場合、有資格者が監視・停止できることなどを義務化ほぼ無関係

出典: 新版Usage Policy、改定告知。「関係」列は筆者の判断です。

既存ルールの明確化

旧版にも同じ趣旨のルールがあり、新版で表現が整理・具体化された項目です。今日から守るべき内容だと考えてください。

項目旧版新版
ステマ・サクラ・偽レビュー詐欺的行為の節で「偽レビュー、コメント、メディアなど欺瞞的なコンテンツの生成」を禁止。政治分野には「人工的な政治運動」の禁止新設の「欺瞞的キャンペーン・人工的活動」節に集約。政治だけでなく「商業的」な欺瞞も対象と告知で明言。例としてサクラ、アストロターフィング、偽レビュー、人間を名乗るbot
なりすまし・人間のふり実在の人物・団体のなりすまし、「結果を人間が作ったものとして提示する」など人間を装うことを禁止(プライバシーの節)偽情報の節に移り、「相手に人間と話していると信じ込ませる」ことの禁止として整理。「明確に開示されたパロディ、風刺、フィクションは禁止しない」と例外を明記
盗用・AI利用の無断提出「適切な許可や表示なしに盗用し、AI支援の成果物を提出すること」を禁止同じ文言を維持。変更なし
スパムスパムの生成・配信、自動化によるアカウント作成やスパム的行動を禁止同じ趣旨を維持
個人情報同意なき個人情報の共有、非公開の連絡先や健康データの無断収集を禁止同趣旨に加え、本人が知らず同意もしていないまま第三者へ販売・提供・開示するために、複数の情報源から個人のプロフィールを作ることを明記(ポリシーで禁止された用途の一環として行う場合)
選挙・政治「個人向けの投票・選挙運動ターゲティング」を一律禁止「民主的プロセスを損なわない」に改称。有権者を欺く・選挙を妨害する行為に絞り、一律禁止は削除(緩和方向)
高リスク用途法律、医療、保険、金融、雇用・住宅、学術試験、「自動生成して外部公開するメディア・報道コンテンツ」専門家による確認とAI利用の開示という中核は同じ。対象を11分野の「個人への助言・判断」として具体化。メディア・報道は一覧から外れた
AIチャットボットの開示各セッションの開始時にAIであることを開示開始時「または画面上で」の開示でよいと明記。AnthropicやClaudeの名前を出す必要はない
対応地域対応地域ポリシー違反のアクセスを禁止非対応地域の企業が過半を所有・支配する事業者も対象と明記

メディア・報道が高リスク分野から外れた点は、新旧の一覧を筆者が照らし合わせた結果であり、告知では言及されていません。ただし、自動生成記事でも偽情報やステマの禁止はそのまま適用されます。

適用除外と例外

新版では例外が大幅に具体化されました。旧版の明示的な例外は、政府顧客との個別契約、一般的な健康アドバイス(睡眠・ストレス・栄養・運動)、医療・安全目的の感情認識に限られていました。

個人の発信者に関わる主な適用除外は次のとおりです。

  1. パロディ、風刺、フィクション(新設): 偽情報の禁止は「明確に開示された」パロディ等には及びません。開示が曖昧な場合は保護されないと読めます。
  2. 高リスク用途からの除外(大幅に拡充): 次の使い方は「専門家の確認」と「AI利用の開示」の義務の対象外です。
    • 法律の内容や病気の仕組み、投資の一般論など、特定の個人に当てはめない一般情報・教育コンテンツ
    • 睡眠・ストレス・栄養・運動などのウェルネスコンテンツ
    • すでに受けた助言や診断を理解するための説明
    • 最終的な助言そのものではない、内部の下書き・調査・要約・分析
    • 特定の個人に助言・判断をしない業務運営
  3. 全面的に有利な判断(新設): 保険金の支払いや給付の承認など、完全に有利な判断は人の確認が不要です。個人事業主にはほぼ無関係です。
  4. モデルへの虐待禁止の範囲外(告知で明言): 通常の苛立ち、反論、暗いテーマの創作、モデルのテストや研究は対象外。実際の対応も主にClaudeが会話を終了する形で行うとされています。
  5. 監視禁止の例外(明確化): 同意のある追跡、不正検知、コンテンツモデレーション、ジャーナリズム、法律調査は許容。
  6. 政府顧客との個別契約(旧版から継続): 個人には無関係です。

逆に、性的コンテンツと未成年者の安全に関する禁止には、新旧どちらの版にも例外がありません。未成年者はどの国でも「18歳未満」と定義されています。

商品紹介をする個人事業主が気をつけること

一番影響が大きいのはステマと口コミの扱いです。Claudeで商品紹介を作ること自体は問題ありません。問題になるのは、「誰が言っているか」「お金をもらっているか」を偽る使い方です。

やりたいこと判断の目安注意点
案件・提供品の紹介記事や台本を書く可「PR」「広告」などの表示を外して公開すると「スポンサーの隠蔽」に該当し得る。日本では景品表示法のステマ規制もある
アフィリエイト記事を書く可アフィリエイトであることを開示する。使っていない商品を「実際に使った」と書かせない
自分の実体験をもとにレビューを文章に整える可体験していない効果や感想をAIに足させない。提供品ならその旨も書く
架空の購入者や他人を装ったレビュー・口コミを作る不可偽レビューや偽コメントの作成は旧版から禁止。新版でも欺瞞的キャンペーンの例として明記
X、Bluesky、note、ブログを自分名義で運営する可禁止されているのは、検知やガードレールを逃れるための複数アカウントであり、媒体を複数持つこと自体ではない
サブアカウントや別ブログを独立した第三者に見せて推す不可発信元が同じことを隠して別人の声に見せるのは、新版で明示的に禁止
AI検索対策で記事を大量生成する条件付き自分名義の記事は問題ない。第三者や中立メディアを装うと新設の「情報源の操作」に該当し得る。大量投稿はスパムにも注意
SNSの自動応答botを作る条件付き相手にAIであることを開始時または画面上で伝える。人間を名乗らせない
実在の人物・企業をネタにする条件付きパロディや風刺は、そうだと明確にわかる形で公開する。本人の発言に見せるのは不可
健康食品や美容品を紹介する条件付きウェルネス一般論は可。虚偽・誤解を招く効果効能は偽情報の節に触れる。特定の読者の症状への助言は高リスク用途になり得る
教材や講座の資料を作る条件付き解説や教育コンテンツそのものは高リスク用途の対象外。受講者個人の合否、資格、採用の判断や推薦にClaudeの出力を使う場合は、「教育・資格」「雇用」の高リスク用途に当たり得る
自分のPro契約で他人にサービスを提供する・アクセスを中継する不可無許可でアクセスを転売・中継すること、個人向けサブスク経由でリクエストを流すサービスは新版で明示的に禁止。自分の作業用にツールを組むこと自体が禁止されているわけではない
AIを使ったことを書かずに納品する条件付き契約やコンテストのルールでAI利用の許可や表示が求められるなら、それに従う(盗用・AI利用の無断提出の禁止)

判断の目安は筆者の解釈です。景品表示法など国内法の要件は別途確認が必要で、ここでは扱っていません。違反が疑われる場合、Anthropicは警告、利用制限、一時停止、契約解除を行えると定めています。

自分向けの相談と、読者へ公開する情報の違い

筆者はClaude Proを、次のような作業に使っています。

  • 記事の執筆
  • 毎日のテーマ選び(ルーチンを設定して候補を出してもらう)
  • 情報のソース確認と事実確認
  • 別のAIで作った文章の添削

これらはどれも、公開前の下書きや調査にあたります。今回の改定で使い方を変える必要はありませんが、公開する段階で気をつける点はあります。

自分のために一般情報を調べたり下調べをしたりする使い方は、高リスク用途の除外項目に入っています。ただし、自分個人の状況に合わせた具体的な助言を求める場合の扱いは、本文には書かれていません。読者へ公開する情報には、「誤解させない」という禁止が強く効いてきます。

観点自分向けの相談読者へ公開する情報
一般情報・下調べ対象外。本文は「個人の状況に当てはめない一般情報」と「最終的な助言ではない内部の下書き・調査・要約・分析」を高リスク用途の義務から除外している一般論の解説記事は対象外
個人の状況に合わせた具体的な助言【要確認】自分の税金、契約、健康について具体的な助言を求める場合は、本文に明記がない。義務は「利用者が高リスクな推奨を提供する場合」にかかり、専門家の確認は「依拠しうる個人に助言として届ける前」に求められる。他人に届ける場面を想定した文言だと筆者は読むが、推測である。いずれにしても、利用規約は出力を独自に確認せずに依拠しないよう求めている読者個人の状況に合わせた法律・医療・金融の助言をClaudeで作って渡す場合は、専門家の確認とAI利用の開示が必要
まちがいの扱い自分が裏を取れば済む誤った効果効能や制度の説明は「偽情報」に該当し得る。一次情報で裏取りしてから公開する
誰の言葉か問題にならない使っていない体験談、架空の客の声、隠したスポンサーはNG
AI利用の表示不要新版にも「記事に必ずAI利用を書け」という一般的な義務はない。ただし高リスクな個別助言、AIチャットボット、納品先やコンテストが求める場合は開示が必要
他人の個人情報同意なく入力するのは避ける複数の情報源から特定個人のプロフィールをまとめて公開するのはNG

事例:AIの「食べられる」を信じて毒キノコを食べたケース

2025年11月3日、70代の男性が奈良県下北山村の山中で、ヒラタケやシイタケに似たキノコを採りました。男性が撮影した画像に、AIは「シイタケかヒラタケで食べられる」と答えました。実際は加熱しても毒が残るツキヨタケで、男性は食べた後に嘔吐し、一時入院しています(TBS NEWS DIG、2025年11月21日)。自治体は、AIや図鑑、ネット検索で食べられるかを判断しないよう呼びかけています。

これは「自分個人の状況に合わせた具体的な助言」の典型例です。今回は命に別状はありませんでしたが、カエンタケのような猛毒の種類と取り違えていれば死亡もあり得ました。利用規約も「出力を独自に確認せずに依拠しないこと」を求めています。毒性、薬の飲み合わせ、体調の判断など命に関わることは、AIの答えを入口にとどめ、保健所や専門家に確認してください。

まとめると、一般情報の調査や下書きとしての使い方はほぼ影響を受けません。公開する段階で「事実」「発信者」「スポンサー」の3つを正直に示すことが重要になります。

アカウントが停止されたときの影響とリスク

違反が疑われると、予告なく利用を止められ、返金もない可能性があります。個人事業主に特化した規定はなく、一般ユーザーと同じ扱いです。

項目公式文書に書かれていること出典
取りうる措置違反の疑いがあれば、警告、速度制限(スロットリング)、利用制限、一時停止、利用終了利用ポリシー
出力のブロック一部の出力はリアルタイムでブロックされ得る。「ブロックされたこと自体は違反を示すものではない」利用ポリシー
予告規約違反を理由とする停止・終了は予告なしで行われ得る。有料プランも含む利用規約
料金違反を理由に終了された場合は返金なし。それ以外の理由では、Web購入分は未使用期間を日割りで返金。アプリ内購入はストアの規約に従う利用規約
会話データ終了時、Anthropicはアカウントに関連するデータを削除できる。終了後に自分で取り出せるかは書かれていない利用規約
異議申し立て利用ポリシーには手続きの記載がない。利用規約は、異議申し立ての方法をTrust & Safetyのサポートセンターに案内している利用規約
停止後の再登録別アカウントの作成などで停止を回避することは禁止利用ポリシー

個人事業主にとっての実際の影響は、筆者の想定です。

  • 作業が止まる: 執筆、調査、台本作りをClaudeに頼っていると、納期や更新ペースに直結します。
  • 過去の会話やプロジェクトを失う: 下書きや調査メモをClaude上にしか置いていないと、取り出せなくなる恐れがあります。
  • 残りの料金が戻らない: 違反が理由の場合、返金はありません。
  • 代わりのアカウントも作れない: 停止の回避にあたるため、別のAIサービスへの切り替えが現実的な選択肢になります。

備えとしては、大事な下書きを定期的に手元へ保存し、別のツールでも作業を続けられるようにしておくと安心です。ブロックされただけでは違反にならないので、過度に恐れる必要はありません。ただし、同じ内容を言い換えて何度も試すのは、ガードレールの回避とみなされ得るので避けましょう。

まとめとチェックリスト

新版が施行される2026年11月12日までに、次の点を確認しておくと安心です。

  • Claudeで作った案件・提供品の紹介に、PRや広告の表示を入れている
  • レビューは自分の実体験をもとにし、架空の客の声や体験談をAIに作らせていない
  • サブアカウントや別サイトを「独立した第三者」に見せていない
  • 健康・美容・お金の情報は一次情報で裏取りしてから公開している
  • パロディや風刺は、そうだと明確にわかる形にしている
  • 自動応答botを使うなら、AIであることを表示している
  • Claude Proのアカウントを他人や自作サービスに使わせていない
  • 納品先やコンテストのAI利用ルールを確認している
  • 大事な下書きや調査メモを手元にも保存している

今回の改定は、普通に執筆や調査に使っている人にとっては大きな変化はありません。ただ、「商業的な欺瞞」が政治と並んで明記されたことで、発信者の「見せ方」に対するルールは以前よりはっきりしました。

出典