「AIに話しかけたら、個人情報が漏れてしまうのでは」

「本物そっくりの写真や声を作れるなんて、ちょっと怖い」

ニュースやSNSでAIの話題を見るたびに、不安になる方もいると思います。便利だと言われても、仕組みがよく分からないものに、自分のことを話すのはためらいますよね。

私は普段、記事を書いたり、ゲームを作ったりするときにAIを使っています。その立場からも、何でも安心して任せてよいとは思っていません。

ただ、AIについて少し知ることは、自分を守る助けにもなると考えています。

どんなことに気をつければよいのか。何を任せて、何を自分で確かめるのか。そこが少し分かると、「何となく全部が怖い」という気持ちを、具体的な備えにつなげられるかもしれません。

この記事では、難しい言葉をできるだけ使わずに、AIとの付き合い方を考えてみます。読み終わってすぐに使い始める必要はありません。まずは、身近な場面を一つ思い浮かべながら読んでみてください。

ここでお話しするのは、文章や画像を作る「生成AI」です

AIという言葉には、いろいろな仕組みが含まれます。この記事では主に、質問に文章で答えたり、画像や音声を作ったりする「生成AI」を取り上げます。

文章でやり取りするタイプなら、例えば「この言葉を分かりやすく説明して」と頼むと、説明文を返してくれます。

人と話すように使えるので、何でも理解してくれるように感じるかもしれません。ただ、自然に会話できることと、答えが正しいことは別です。間違った内容を、もっともらしい文章で答えることもあります。これは最初に覚えておきたい特徴です。[1]

「AIが怖い」の中身を、三つに分けてみる

1.入力した情報が、どう扱われるか分からない

AIに相談するとき、名前や住所、仕事の資料までそのまま入れてよいのか。不安になるのは、もっともだと思います。

入力した内容の扱いは、サービスや契約、設定によって違います。個人情報保護委員会も、入力した個人情報が学習などに利用される可能性を踏まえ、利用規約やプライバシーポリシーを確認するよう案内しています。[2]

使い始めのうちは、自分や誰かの秘密を入れなくてもできる質問から試すと、扱う情報を絞れます。

例えば、「フィッシング詐欺って何ですか」と聞くために、自分の名前や電話番号を伝える必要はありません。

パスワードや認証コード、本人確認書類の画像は入力しない。家族やお客さんの情報、外に出してよいか分からない仕事の資料も、そのまま渡さない。まずは、この線を引いておくとよいと思います。

2.誰かがAIを、だますために使うことがある

AIは、自然な文章や、本物に似た画像・音声を作ることができます。米国のFBIも、こうした技術が詐欺のメッセージや、なりすましに悪用される例を紹介しています。[3]

情報漏えいのあとに届くメールにも、気をつけたいところです。IPA(情報処理推進機構)は、2026年10月26日の案内で、国内の幅広いサービスで情報漏えい事案の公表が相次いでいると説明しています。[6]

漏れたメールアドレスが、今後、偽のメールの送り先として悪用される可能性があります。名前なども一緒に漏れていると、自分の氏名が書かれた、本物らしく見える連絡が届くおそれもあります。[6]

「自分の名前を知っているから本物」とは判断できません。例えば「情報漏えいに伴う確認が必要です」というメールが来ても、その中のリンクから手続きを始めず、普段の公式アプリや登録済みのブックマークから、サービスの案内を確認します。[5][6]

情報漏えいのニュースだけで、原因がAIだと分かるわけではありません。漏れた情報が詐欺に使われる可能性と、AIが文章や声を本物らしく見せるために悪用される可能性を知り、確認する手順を持っておきたいです。

だからといって、届くメールや電話を全部怖がり続けるのも疲れてしまいますよね。

覚えておきたいのは、文章がきれいだから、声が似ているからという理由だけで、相手を信用しないことです。

例えば、家族に似た声で「急いでお金を送って」と電話が来ても、いったん切って、自分が以前から知っている番号へかけ直す。米国の消費者保護機関であるFTCも、この確認方法を勧めています。[4]

AIで作られたものかを、その場で見抜く必要はありません。いつも使っている連絡先で、本人に確かめる方法があります。

すでにAIを使っている方なら、相手から言われたことを、個人情報を入れずに説明して、確認すべき点を相談する方法もあります。まだ使っていない方に向けて、後半で質問の例を紹介します。

3.AIの答えを信じて、間違った行動をしてしまう

AIに「これは安全ですか」と聞いて、「安全です」と返ってきたら、安心したくなると思います。

でも、AIは判断を間違えることがあります。説明が丁寧でも、根拠として挙げた情報が正確とは限りません。[1]

お金を払う、個人情報を送る、知らないアプリを入れる。そんな行動の前には、AIの答えだけで決めず、利用しているサービスの公式窓口などで確認してください。

使い慣れてきた方なら、別のAIに「この説明に見落としはありませんか」と聞く方法もあります。複数のAIが同じ答えを出しても、正しさが保証されるわけではありません。確認すべき点を増やす参考にして、大切なことは本人や公式窓口で確かめます。

初めて使う段階で、いくつもAIをそろえる必要はありません。まずは一つの質問から、確かめ方を覚えていければよいと思います。

怖さの中身が分かると、備え方も変わります。入力する情報を減らす、別の連絡先で確かめる、大切な判断を任せきりにしない。この三つは、別々に取り組めることです。

AIを使っていなくても、知っておくことは役に立つ

自分ではAIを使わないと決めていても、SNSで流れてくる画像や、届いたメッセージにAIが使われている可能性はあります。[3]

ここで大切なのは、「使わない人は危ない」と決めつけることではありません。AIを使わずにできる対策も、たくさんあります。

例えば、銀行や通販サイトを名乗るメールが来たとき。メールの中のリンクから手続きを始めず、普段使っている公式アプリや、あらかじめ登録したブックマークから確認する方法です。警察庁も、この方法を案内しています。[5]

「本物かどうか見分けられない」と感じても、自分を責めなくて大丈夫です。見た目で決めずに確認する手順を持つことが、備えになります。

最初は、AIへの不安をそのまま聞いてみる

「AIが怖い」「何を信じてよいか分からない」。そんな気持ちも、そのまま質問にしてかまいません。詳しい使い方を覚える前に、気になっていることから聞いてみる方法があります。

例えば、こんな質問です。

AIを使うのが少し怖いです。何を話してよくて、何を入力しないほうがよいのか、初めて使う人にも分かる言葉で教えてください。

ここに書いたことが、ほかの人に見られたり、AIの学習に使われたりしないか不安です。公式の説明や設定画面で、どんな項目を確認すればよいですか?

返ってきた説明が難しければ、「もっと簡単な言葉で教えて」と聞き直してみます。分からないことや、不信に思っていることを遠慮せずに聞けるのも、使い方の一つです。

AI自身の説明にも間違いがあるので、情報の扱いについては、サービスの公式案内や設定画面と照らし合わせます。[2] 「安全です」という返事だけで決めず、納得できる材料を少しずつ確かめていきます。

その中で「この使い方なら、相談してみてもよさそう」と思えるAIが一つ見つかれば、分からないことを整理する相談役にできます。頼れる相手を一つ増やすような気持ちで、自分に合う距離を考えてみてください。

やり取りをしても不安が残ったり、使いたいと思えなかったりしたら、無理に続ける必要はありません。メールのリンクからすぐに手続きしない、急な送金のお願いはいつもの連絡先で確かめる、といった備えはAIを使わなくてもできます。

気になったときのために、無料で試せるAIの名前を

今すぐ登録するかどうかを決めず、まずは名前だけ知っておくのでもよいと思います。2026年10月31日時点で、無料の範囲で利用できる主な候補には、次のようなものがあります。

  • ChatGPT(チャットジーピーティー):OpenAI(オープンエーアイ)が提供。親しみを込めて『チャッピー』と呼ぶ人もいます。
  • Claude(クロード):Anthropic(アンソロピック)が提供。
  • Gemini(ジェミニ):Google(グーグル)が提供。
  • Muse(ミューズ):InstagramやFacebookを運営するMeta(メタ)が提供。

この記事には、これらのサービスへのリンクを載せていません。使ってみたいと思ったときに、サービス名と会社名を手がかりに調べてみてください。サイトやアプリを選ぶ際は、公式の提供元かどうかも確認します。

普段使っているサービスの会社が分かると、少し身近に感じられるかもしれません。情報の扱いや利用条件は、それぞれのサービスで確かめながら選びます。

無料で使える機能や回数、登録条件はサービスごとに異なり、変更されることもあります。最初から有料プランを契約したり、複数のAIをそろえたりする必要はありません。自分の秘密が含まれない質問を一つ試すところからでも十分です。

AIには、分からないことを整理する手伝いも頼める

少し試してみたいと思ったら、AIに、自分で確認するための準備を手伝ってもらう使い方もあります。

例えば、難しい説明を読みやすくしてもらうこと。問い合わせる前に、聞きたいことを整理すること。そんな使い方です。

試してみたい方は、個人情報を入れずに、次のように聞いてみてください。以下は質問の例で、答えの正しさを保証するものではありません。

難しい言葉を、身近な言葉にしてもらう

「二段階認証」とは何ですか。スマートフォンに詳しくない人にも分かるように、身近な例を使って説明してください。

分からない言葉が出てきたら、「その言葉も説明して」と聞き直せます。最初から専門用語を覚えておく必要はありません。

具体的な設定方法は、使っているサービスの公式ヘルプで確かめます。

不安な連絡が来たとき、確認の順番を考えてもらう

急いで手続きするよう言われると、不安で考えがまとまらなくなることもあります。そんなときは、相手に返事をする前に、AIへ状況を説明して、確認する順番を相談できます。

通販サイトを名乗る相手から、「今日中に支払い情報を更新してください」とSMSが来たとします。リンクはまだ開いていません。どんな点に注意して、どこで確認すればよいですか? 分からないことは、分からないと伝えてください。

このように、状況を一般的な言葉にして質問できます。届いたメッセージの全文や、氏名・注文番号・リンクなどを、そのまま貼る必要はありません。スクリーンショットにも個人情報が含まれることがあるので、最初は状況だけを短く書く方法で十分です。

相談するときは、普段使っているAIや、自分で公式の提供元を確認したサービスを使います。

AIには「これは本物ですか」という判定だけを求めず、確認すべき点や手順を整理してもらいます。実際の確認には普段の公式アプリや窓口を使い、AIが「問題なさそう」と答えても、それだけを理由にリンクを開かないようにします。[5]

問い合わせで聞くことを整理してもらう

利用しているサービスから、情報漏えいのお知らせが出ています。公式窓口に確認したいので、「どんな情報が対象か」「利用者に必要な対応は何か」を聞くための短い質問文を作ってください。実際の個人情報は使わないでください。

不安なときは、何から聞けばよいのか分からなくなることもあります。そんなときに、質問の形を整えてもらう使い方です。

AIとのやり取りだけで不安を解消しようとせず、必要な確認先につなげるために使います。

怖い気持ちを、具体的な備えにつなげていく

AIが怖いと感じる気持ちを、無理に消す必要はないと思います。便利さに期待する気持ちと、慎重でいたい気持ちは、両方あってよいものです。

私は、AIについて知ることが「何を渡さないか」「どこで立ち止まるか」を決める助けになると考えています。

分からない言葉を説明してもらう。確認したいことを整理してもらう。そして、大切な情報は公式の案内や窓口で確かめる。

自分の判断を支えるために、AIの力を借りられる場面もあります。

今日覚えて帰ることが一つだけなら、急がされたときほど、いつもの方法で確かめること。

そこから、少しずつでよいと思います。


関連記事

情報漏えいのあと、どんな連絡に気をつけたいかは、こちらの記事でも整理しています。

参考にした公的機関の情報

AIの機能や情報の扱いは、サービスや設定によって異なり、変更されることもあります。利用する際は、そのサービスの最新の公式案内を確認してください。

  1. 消費者庁「AI利活用ハンドブック~生成AI編~」(PDF)
  2. 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(PDF)
  3. FBI「Criminals Use Generative Artificial Intelligence to Facilitate Financial Fraud」(英語)
  4. FTC「Scammers use AI to enhance their family emergency schemes」(英語)
  5. 警察庁「フィッシング対策」
  6. IPA「自分の個人情報等が漏えいした際の『対処』と『日頃の対策』」(2026年10月26日公開)

無料で試せるAIの情報は、2026年10月31日に各社の公式料金・プラン案内と、MetaのMuse日本提供開始の公式発表で確認しました。サービスの紹介は、名前と提供会社のみを記載しています。